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日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議1

多くの日本語教師が固唾を飲んで見守っていた「日本語教師の国家資格化の動き」ですが、結局、法案として提出されることはなく第208回通常国会は6月15日に閉会しました。しかしながら、「日本語教師の国家資格化の動き」がなくなったわけではありません。文化庁で2022年5月31日に第1回目の会議が開催された「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は、日本語教師の国家資格の法制化に向けた詳細を検討する有識者会議です。

これまでの経緯整理

2019年6月に「日本語教育の推進に関する法律」*1が成立し、その中で、日本語教師の資格に関する仕組み整備や日本語教育機関の評価制度の在り方の検討が必要とされました。

2020年~2021年には「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」が開催され、最終報告として「日本語教育の推進のための仕組みについて(報告)」*2が取りまとめられました。この中で、

  • 教員の資格取得要件、試験の内容、指定試験機関及び試験の免除資格
  • 日本語教育機関の分類、評価制度の性質及び審査項目等日本語教育機関の評価制度に関する事項

が提示されました。これらの詳細について検討するための有識者会議が「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」*3です。

つまり、「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は、「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」の内容について、法制化のために必要な詳細を検討する会議ということになります。法制化の準備は着々と進んでいます。

検討事項は大きく2つ

会議の検討事項は、大きく「日本語教育機関の認定制度」と「日本語教師の国家資格」の2つになります。具体的には、以下の通りです。

日本語教育機関の認定制度に関すること

  1. 認定の基準(修業年限、授業時間、教育課程、生徒数、教員数、施設設備等)の在り方
  2. 自己点検・情報公表

日本語教師の国家資格に関すること

  1. 筆記試験
  2. 教育実習
  3. 指定教員養成機関
  4. 日本語教員の登録

これらの項目の多くは「『日本語教育の推進のための仕組みについて(報告)』に記載された審査項目を踏まえて」「『日本語教育の推進のための仕組みについて(報告)』に加えて必要があれば検討」となっており、「日本語教育の推進のための仕組みについて(報告)」を基にした議論になるものと思われます。

その一方、日本語教育機関の認定制度に関すること「2. 自己点検・情報公表」は「日本語教育の推進のための仕組みについて(報告)」ではあまり触れられてこなかったために、本会議で改めて議論されるものと思われます。

また本会議の実施期間は2022年4月28日~2023年3月31日とされていますが、日本語教育機関の認定制度に関すること「1. 認定の基準」や日本語教師の国家資格に関すること「3. 指定教員養成機関」については、本会議で方向性を取りまとめたのち、より詳細な基準について、「文化審議会国語分科会日本語教育小委員会」*4において専門的な議論を実施するとされています。つまり、「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」で大きな方向性を決定した上で、別会議の「文化審議会国語分科会日本語教育小委員会」で詳細を議論するということのようです。

日本語教育機関の認定制度・日本語教員の国家資格のイメージ

会議で示された「検討に当たってのイメージ」は、以下のようになっています。文部科学省が日本語教育機関を認定し、また、問題がある場合は是正措置を講じることもできる、認定を受けた認定日本語教育機関は、文部科学大臣の認定を受けていることを学生募集等の広告等に用いることができるとのことです。これまで法務省の告示基準による管理の色合いが強かった日本語学校について、文部科学省が本腰を入れて取り組むというのは大きな変化だと思われます。

また、認定日本語教育機関において日本語教育を担当する者は、文部科学大臣が指定する教員養成機関が実施する教育実習を修了し、登録した教師(登録日本語教員)であるとされています。

仮にこのイメージのようになるとすれば、日本語学校は「認定日本語教育機関」へ、日本語教師は「登録日本語教員」への動きが加速する可能性があります。その一方、多様な日本語教育機関をどのような基準で認定するのか、今後の議論の行方が気になるところです。

1.日本語教育機関の認定制度(イメージ)

(1)日本語教育機関の認定

①日本語教育課程を置く教育機関は、日本語教育課程を適正・確実に実施することができる機関である旨の文部科学大臣認定を受けることができる

②文部科学大臣は、認定された日本語教育機関の情報を多言語でインターネット等で公表する。

(2)認定の効果

認定された日本語教育機関は、学生募集の広告等に文部科学大臣が定める表示を付することができる

(3)文部科学大臣による段階的な是正措置

文部科学大臣は、必要な場合に、認定された日本語教育機関に対し、日本語教育の実施に関し報告を求めるほか、勧告や是正命令など段階的な是正措置を講ずることができることとする

2.認定日本語教育機関の教員の資格(イメージ)

認定日本語教育機関において日本語教育を行うために必要な知識及び技能についての試験に合格し、文部科学大臣が指定する教員養成機関が実施する教育実習を修了した者は、文部科学大臣の登録を受けることができる

認定日本語教育機関において日本語教育を担当する者は、登録日本語教員であるものとする。

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