日本語学習者が日本語を学ぶとき、大きな壁となるのが、日本語の文字。その大変さを綴った「『悲しくて涙が出る』ほど、日本語の文字習得は苦労する」という記事は日本語ジャーナルの中でも常にランキング入りしています。私たちは日本語の文字を小学生の頃から何年もかけて習得するわけですが、同じようには時間をかけられない学習者のために、「文字を効率的に覚える工夫」が詰まったテキストを紹介します。
「ひらがな・カタカナ」を覚えやすい順番で覚える
「ひらがなを、50音順に覚えなくていいんじゃないか」という著者のことばからスタートして作られたのが『すぐ書ける!きれいに書ける!ひらがな・カタカナ練習ノート』です。
大抵のテキストでは、ひらがな・カタカナは「あ、い、う、え、お」「か、き、く、け、こ」と50音順に覚えていくようになっています。しかし、これらの並びでは例えば「あ」と「い」の文字の形はバラバラで共通点がありません。
このテキストでは、このような順番で覚えるのではなく、例えば「く、ヘ、し、つ」「よ、ま、は、ほ」「の、め、ぬ、あ」のように共通点のある文字を並べて、まとめて覚えられるようになっています。更に、学習者が間違いやすい箇所への注意や、覚えやすくするためのアドバイスを各文字に翻訳付きで入れています。例えば「ぬ」であれば「『め』の最後に小さな〇を書いて終わります。」というアドバイスを、「そ」であれば、「ここでペンをはなしません。」と1画で書くことを示しています。
カタカナも同様で、「線がはなれているカタカナ」として「ニ、ハ、リ、ル」をまとめて覚えたり、「2本の線が接しているカタカナ」として「ア、マ」「ク、タ」をまとめて覚えたりします。
このように、「覚えやすさ」にこだわったのが『すぐ書ける!きれいに書ける!ひらがな・カタカナ練習ノート』です。
同様のコンセプトで作られた、漢字の入門テキスト
同じ著者の執筆で、『すぐ書ける!きれいに書ける! ひらがな・カタカナ練習ノート』の続編として作られたのが『かんたんルールとパーツで覚える きほんの漢字99』です。初めて漢字を学ぶ学習者にあまり負担をかけないよう、文字の多さにうんざりすることのないよう、入門者向けとして100より一つ少ない、99の漢字を選びました。
このテキストにもたくさんの工夫が詰まっています。漢字の書き方・書き順にはルールがあるので、まずはそれを少しずつ覚えてもらいながら、簡単な漢字から学びます。ルールは例えば「よこ線は左から右に書く」「よこ線とたて線がある文字はよこ線から書く」などです。そして「よこ線とたて線がある漢字」は「十、土、王」、「ななめの線がある漢字」は「木、本、来」のように、同じパーツを持った漢字をまとめて覚えていきます。
また、既に覚えているカタカナを利用し、「『ノ』を使う漢字」として「九、女」、「『タ』を使う漢字」として「名、外」のようにも覚えていきます。あとは例えば、「同じパーツを使う漢字」として、「林、多、竹、品、肉」、「四角い漢字」として「回、四、国」などもまとめて覚えます。
このように、書き方の共通点、パーツの共通点がある漢字ごとに覚えていくことで、学習者の負担を減らすことを狙っています。そして、今、文字を打ち込むのはパソコンやスマホを使うのが主流ですが、まずはこのテキストを通して、学習者にとってごちゃごちゃして見える漢字をパーツの組み合わせとして認識する力を付け、最終的には打ち込む文字を選べるようになることを目指していきます。
以上の2冊は、日本語の文字学習を始める際のテキストとして最適です。翻訳は英語、ベトナム語、インドネシア語が付いていて、地域の日本語教室でお使いいただくのもおすすめです。「覚える工夫」の詰まったテキストを入口として、日本語の文字を覚えるコツをつかみ、学習者その後の文字習得をできるだけ楽に進めることができるようになれば、と思います。
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