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日本語教師プロファイルAkoさんー自分を表現できる場を持つと世界は広がる!

今回ご紹介するのは、ゲーム業界やIT業界に特化したレッスンを行っているフリーランス日本語教師のAkoさんです。ご自身の発信の場としてTwitter、Facebook、Instagram、YouTube、PodcastなどのSNSを駆使し、Twitterのフォロワー数はなんと約2.9万人だそうです。最近ではフリーランス教師のためのセミナーにも登壇されています。そんなAkoさんに現在のお仕事のことや、二人のお子さんを育てながらのワークライフバランスについてもお話を伺いました。

養成講座卒業後、フリーランス日本語教師に

――日本語教師になったきっかけを教えてください。

学校を卒業して22歳で学習塾に就職しました。教える方じゃなくて教務事務でした。でもその仕事がちょっと辛くて、やめたいな、何かないかなと思っている時に、面白そうな日本語教師養成講座を見つけたんです。それで受講を始めました。そこで実習まで終えたんですが、自分が教壇に立っているイメージがわかなくてちょっと不安も感じていました。そんな時、養成講座のクラスメートで世田谷区の日本語ボランティアをしている方がいて、一緒にやらない?って誘ってくださったんです。そこは学習者さんと教師の1対1で教えるスタイルでした。そんな教え方のスタイルがあることを知らなかったのですが、やってみたらすごく楽しくて。でも、ボランティアなので仕事にはできないのかなーと思いながらアルバイトは続けていました。

その頃、英会話スクールに通っていましたが、そこの外国人の先生に「実は日本語教師になりたいんだけど」という話をしたら、「じゃあプライベートレッスンやってみる?」って言われて日本語の生徒になってくれました。さらに同僚を紹介してくれて、そのうち口コミが広まっていって、少しずつ日本語のレッスンができるようになりました。

――じゃあ、初めからフリーランスとしてのスタートだったんですね。

はい、そうですね。でも、今でこそフリーランスという言葉が確立されてきましたが、その頃はフリーランスなのかフリーターなのかわからないというような状態でしたよ。集客のためにチラシを作ってカフェに置いてもらったり、語学教師を派遣する会社に登録したこともありました。また短期間ですが、日本語スクールで非常勤として教えたこともありました。

その頃は独身でしたし、都内のわりと便利な場所に住んでいたので、レッスンは何時でもOK、どこにでも行けます!ということをモットーにフレキシブルに動ける教師になろうと思っていました。それで早朝や夜間に欧米人のビジネスパーソンやその家族の方を中心にレッスンをしていました。

自分のホームページも作りました。それでも初めはアルバイトをしながらの生活が続いていたのですが、だんだん日本語の方の収入が増えて2年ぐらいで日本語教師1本になりました。

SNSを始めたきっかけは、子どもができて生活がガラッと変わったこと

――Twitterを始めたきっかけはありますか。

子どもが生まれて生活が変わったことが大きいです。それまでは何時でもレッスンができる教師だったのに、時間に制限ができて、生徒さんが働いている昼間の時間しかレッスンができなくなってしまったんです。これはどうしたものだろうかと考えている時に友人がSNSを始めてみたら?と教えてくれました。SNSを使えば周りにいる人だけでなく、全く知らない人にも私のレッスンをお知らせできるし、昼間の時間にレッスンを希望する人に出会えるかもしれないと思いました。それでTwitterを始めたのが2013年のことです。初めはTwitterで集客ということに抵抗もあったので、日本語についての豆知識を投稿することをずっと続けました。すると徐々にフォロワーが増えて、問い合わせにつながっていきました。

子どもがいますから、自分のホームページには対応できる時間を10時~16時と明記してありました。その時間内でいいから日本語研修をしてほしいという企業があり、そこに出向いて会議室などでレッスンをするようになりました。

――昼間の時間帯はお子さんを保育園に預けていたんですか?

実は、私の住んでいる市ではフリーランスだと認可保育園に入れるのが難しくて、週3回認可外の保育園に入れたり、幼稚園の延長保育を利用したりしていました。仕事をしてもその日の保育料を稼げればいいやぐらいの収入でしたが、でも仕事を辞めたくなかったんです。一回辞めてしまったら戻るのは難しそう、であれば細々とでも続けていこうと考えました。子どもがいてもできること、例えばレッスンに使えそうな記事を集めてコンテンツを作ることなどもやっていました。子どもが生まれる前に思い描いていた仕事と育児の両立というイメージとは違って、時間を作るのは本当に難しかったです。理想と現実は違う!という感じ。でも子どもは必ず大きくなりますし、今では続けていてよかったと思います。だから今、子育て中で迷っている日本語教師の方には無理せずできることを続けていってくださいと言いたいです。

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専門性を身に付けるために、自分もやってみる!

――現在、ゲーム業界やIT業界の学習者をターゲットに教えているのは、何かきっかけがありましたか?ご自身がゲーム好きとか?

偶然ですが、5、6年前にあるゲーム業界の会社から依頼をいただいてレッスンをしました。生徒さんの1人は子どもの頃からゲームが好きで、ゲームで日本語を勉強して、そのゲームの会社に就職。月曜日から金曜日まではゲームを開発し、土日はそのゲームで遊ぶって言うんです。趣味と仕事が直結していて、なんて面白い業界なんだろうと思って。

それに、ずっと日本語教師を続けてきて、そろそろ何か専門性を身に付けたいという思いもありました。この業界だったらこの先生がいいよって言われるような存在になりたいと。それで自分でも意識してゲームやIT関連のものを読んだり、話を聞いたりして学ぶようになりました。また自分でもプログラミングの学校に行って、プログラミングを学んでみました。全然できませんけど(笑い)。でも生徒さんたちがこうやって働いているんだということがわかって、得るものは大きかったです。もともとテクノロジーに関して興味は持っていましたので。そのようにしているうちに教える相手はほぼゲーム業界とIT業界の方になりました。

――現在はすべてオンラインで教えていらっしゃると聞きましたが。

実は、コロナの前まではオンラインには苦手意識があり、私は対面レッスンで行く!と心に決めていたんです。しかし2020年の3月からオンラインに変更せざるを得ない状況になりました。またゼロからやり直すのかという気持ちで不安になりましたが、逆にじゃあ、もうオンラインで生きていこう!と決めたんです。それでYouTubeとPodcastを始めました。日本語を学習するツールとしてYouTubeやPodcastが使われていることは知っていたんですが、実際にどういう感じなのかはわからなかったので自分でやってみようと思いました。通勤する時間がなくなったので時間も少しできましたし。

SNSは出会いを作り、自分を表現できる場

――2020年、2021年は教師のためのセミナーにも登壇されていますね。

そうですね。依頼があって、セミナーでお話しする機会を得ました。2021年は定期的にセミナーをすることも決まっています。特にフリーランス教師として活動する際の効果的なSNSの使い方についてお話します。SNSというメディアを自分で持つことで出会いの場を作れるし、自分を表現できるんです。ぜひ自分の武器を見つけていってほしいと思っています。

――ご自分の現在のレッスンについてはどうですか。

オンラインレッスンを始めたことで、これまでやってみたかったことが実現できました。それはグループレッスンです。今まで一つの企業内で同レベルの学習者を集めることは難しかったんですが

オンラインであれば世界中から集めることができますから。それで現在N2、N3レベルのクラスを開講しています。N2クラスはITとゲームに特化したクラスです。

――TwitterのバナーではVR(Virtual Reality)のゴーグルをつけている姿がありますが、レッスンにVRも取り入れていますか。

いいえ、これはまだ趣味です。ただ、VRが好きだとTwitterでいつも言っていたら、誰かが私を見つけてくれて、アメリカの会社からオファーがありました。日本語を使うVRのゲームを開発しているチームで、日本語についてアドバイスしてくれないかというものでした。現在コンサルタントとしてチームに参加しています。この仕事をいただけたのも常に自分について発信しているからこそだと思っています。

いつの時代も結局いいレッスンをすることが一番大切

――これからAkoさんのようにSNSを使って集客し、フリーランスで教えてみたいという人も増えていくと思うのですが、何かアドバイスがあればお願いします。

まずは学習者が今どんな方法で勉強するのがトレンドなのかに意識を向けてほしいです。教師側の目線ではなくて、学習者側の目線で。

もう一つは、SNSを使って集客できるようになったとはいえ、一番大切なことは学習者にとって納得できるいいレッスンを提供することだと思っています。ぶれずにいいレッスンをしていれば口コミもついてきます。SNSは口コミを助けてくれるものであって、結局は口コミが強いんです。

取材を終えて

二人のお子さんを育てながら、自分ができることに集中して、活動の幅を広げていったAkoさん。自分がどんな日本語教師になりたいのかビジョンがはっきりしていて、さらに必要とあればどんどんチャレンジしていく姿には見習うところが多かったです。

取材・執筆/仲山淳子

流通業界で働いた後、日本語教師となって約30年。5年前よりフリーランス教師として活動。

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