東京・中野区の留学生と中野区長が直接話をする懇談会がありました。(NJ編集部)
外国人が急増している中野区
東京・中野区にはここ数年、多くの大学がキャンパスを構えるようになりました。明治大学の新キャンパス、早稲田大学の国際寮、帝京平成大学……。また、日本語学校に通う外国人が急増したこともあり、ここ5年で中野区の外国人住民(比率)が増えています。2015年に3.88%だった外国人住民比率は、2019年には5.83%まで増えました。
7月に明治大学中野キャンパスにおいて、中野区長と外国人留学生10名との公開懇談会が行われました。懇談会は外国人も日本人も住みやすい街を目指すにはどうしたらいいか、特に暮らしの問題に焦点を当てて、学生と区長・区職員と地域住民がともに考える場になりました。
懇談会は明治大学国際日本学部の山脇啓造教授のゼミと中野区の主催。懇談会には中野区の職員も数多く参加し、留学生が日頃生活している上で困っていること、疑問に思っていることを行政に対して直接伝える貴重な機会になりました。酒井直人・中野区長も「課題があれば具体的に良くしていきたい」と大変意欲的でした。
懇談会では特に、住居探しやゴミ出しなどの生活マナーについて話し合われました。
いまだに「外国人はお断り?」
まず留学生から出たのは、アパートを探す際の苦労話でした。
「大家さんからアジア系の人はダメだと言われた」「本当は中野駅の近くに住みたかったが、何度も断られて中野駅から離れたところのアパートを借りた」「不動産屋さんのショーウィンドーに気に入った部屋の写真が貼ってあったので、部屋を見たいと言ったところ、この物件は外国人は借りられないと言われた」
「外国人住民調査報告書」(法務省/2017)によれば、日本で住居を探した外国人のなんと約4割が「外国人であることを理由に入居を断られた経験がある」という調査結果が出ています。また、「『外国人お断り』と書かれた物件を見たのであきらめた」という回答が26.8%、「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」という回答が41.2%ありました。明らかな差別だと思われますが、このような「外国人お断り」が東京オリンピックを控えた日本でいまだにあるようです。
次に話題になった「ゴミ出し」については、分別基準や出す曜日、粗大ゴミの出し方など、外国人にとっては自国とルールが違うので(日本国内でも自治体によってさまざまですが)、大変戸惑っている様子が分かりました。
酒井区長からは「アプリを見れば全て分かります」という答えがありましたが、そもそもそのアプリの存在を留学生のほとんどが知らないことがその場で判明し、「まずは、アプリを知ってもらうことから始めないと……」と中野区長は頭を掻いていました。
ゴミ問題は万国共通の問題であり、現に「東京湾の埋め立て処分場もあと50年でいっぱいになってしまう(区長談)」とのことから、国籍に関わらず日本に生活する全ての人がゴミを減らす努力をしていくことが必要です。
最後に酒井区長は「知らない国に来て、孤立して、誰も助けてくれない状況にならないようにするのが行政の役目なので、外国人が住みやすい行政サービスやセーフティネットを考えたい。地域に友だちをつくったり、いろいろなコミュニティに入ったりできるような環境を整えていきたい」と抱負を語りました。山脇教授は「これまでも中野区と連携してきたが、2019年度に中野区に文化・国際交流課ができた。今後さらに連携を深めて具体的なアクションにつなげていきたい」と力強く会を締めくくりました。
地域に根差した山脇ゼミの活動
今回、中野区と一緒に懇談会を主催した明治大学山脇ゼミは、東京都主催の「多文化共生プレゼンコンテスト」への参加、「なかの多文化共生フォーラム」の主催、「やさしい日本語ツアーin中野」の実施など、大学のキャンパスを飛び出して、地域に根差したユニークな活動を展開しています。
「やさしい日本語」については、「ユニバーサルデザインとしての〈やさしい日本語〉」でも取り上げましたが、山脇ゼミではこの「やさしい日本語」が、多文化共生社会を作るための大切なポイントだと考え、地元の中野区の観光協会や商店街と協力して、動画作成やツアー企画、マップ製作など、「やさしい日本語」の普及に取り組んでいます。
この活動に協賛し、店頭で「やさしい日本語」が使えるお店には、ゼミ生が考案したキャラクター「やさゾウ」が目立つように掲示されています。中野区の野方や鷺宮の商店街を歩いて、ぜひ「やさゾウ」を見つけてみてください。
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