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実践してみませんか、「日本語ボランティアチューター制度」

前々回前回のコラムでは「日本語ボランティアチューター制度」について、どんな活動をするものなのか、また実際の学習者との交流の様子や、チューター活動で得られることなどを紹介してきました。日本語教育機関でこの制度を取り入れてみたい、この制度に興味がある……と思ってくださった方に向け、今回は、わたしの学校ではどのようなルールのもと活動を進め、チューターと学習者をマッチングする際は何に気をつけているか、などをご紹介したいと思います。(惟任将彦:名古屋YMCA日本語学院主任教員)


 少しづつ出会ひに愛をからませて互いの顔を照らす陽光

チューター活動におけるルール

チューター活動をしていただくのに、高校生以上の方なら、性別、年齢、職業などを問うことはありませんが、やはりチューターとしての基本的な姿勢、方向性を納得した上で始めていただく必要があります。そこでまず、チューター活動に興味を持たれた方が登録する際には、以下の活動資格を満たすこととしています。

(1)高校生以上の方

(2)留学生の国籍や文化、習慣、宗教等の違いを超えて交流がしてみたい方

(3)留学生の日本語レベルによらず、コミュニケーションをとるための努力をしてくださる方

(4)活動の趣旨を十分に理解し、継続的に活動してくださる方

(留学生の交流支援をしていただきます。宿題を手伝ったり、日本語を教えたり、語学交換をする活動ではございません)

(5)互いに学び合おうという姿勢で、留学生と向き合える方

その上で一度見学に来ていただき、実際に活動の様子を見た上で、チューターに登録するかどうかを決めていただいています。実際に活動の様子を見ておくことは大切で、「1対1でやるとは思わなかった」「教科書は使わないんですね」といった声を聞くこともあります。また、見学に来られた時のその方の印象や雰囲気が学習者とマッチングする際に大いに参考になります。なお、チューター登録用紙には、住所、氏名、性別、年齢、職業、連絡先、活動可能時間帯、趣味、外国での生活(外国語学習経験も含む)経験や、外国人との交流ボランティア経験の有無等を記入していただきます。

一方、チューター活動を希望する学習者には、4月と10月にオリエンテーションをおこなっています。内容は、チューター活動は勉強ではなく交流の時間であること、活動日時を忘れないようにすること、チューターと連絡先を交換し、活動日時の確認等を直接おこなうこと、お金の貸し借りや、保証人・アルバイトの紹介等のお願いを絶対にしないことなどです。これらを確認した上で、申込書に記入してもらいます。

こうして、チューターの登録、学習者の申込ができると、マッチングを始めます。そして、第1回の活動の際に、双方同席の上であらためてチューター活動のルールについて確認します。内容は上記のものと変わりませんが、「ボランティア研修の実践からみる日本語教育コーディネーターの役割―『聴くこと』でつなぐ2つのことばの教育」(萬浪 2015)を参考に、「チューターさんよりたくさん話す」「わからないときは、チューターさんにもう一度聞く」「自分で会話をリードする」「考えているときチューターさんが話そうとしたら、待ってもらうようにする」という4点を学習者に伝えて始めてもらっています。これらは学習者だけでなくチューターにも伝えることによって、わかりやすい日本語で話すことや、学習者に発話の機会を多く与えることなどを意識してもらっています。

マッチングの際に気をつけていること

マッチングの際には、チューター登録用紙に記入していただいた情報や見学で来校されたときの印象を参考にしています。このうち、性別と年齢については、若い男女のペアは作らないようにしています。10年以上前になりますが、一度トラブルがありました。ただ、高校生や大学生などチューターの年齢が若い場合はできるだけ年齢の近い同性の学習者とマッチングするようにしています。アニメやドラマ、J-POP等共通の話題が多いからです。その一方、学習者の中には、60歳以上のチューターとの活動を希望する人もいるのですが、理由を聞いてみると、日本でのお父さん、お母さんのような存在を求めていることがうかがえます。ただ、原則的にこちらから学習者の希望を聞くことはなく、学習者から希望が出た場合には、その希望に対応できるかどうかを検討し、判断するようにしています。

趣味については、初級の学習者とチューターでお互いに重なる、あるいは近い場合はペアにすることが多いです。日本語力に不安がある初級の学習者でも、自分の好きなことについては、スマホを活用するなどして楽しく交流しているからです。たとえば、写真が趣味のペアでは、いっしょに写真を撮りに出かけるなどの学校外での交流につながったこともあります。

海外での生活経験や、外国人との交流経験がなく、初めてなので不安だというチューターは、中級以上の学習者とマッチングするようにしています。こうすることで、外国人と日本語で交流できるということを実感してもらい、安心して活動を続けていただくことにつながると思います。また、初級の学習者とマッチングすることになった場合は、経験のあるチューターと組み、チューター2名と学習者2名という活動形態にすることもあります。

そして、実は私がマッチングの際に最も重視しているのが、見学等でお会いした際のチューターの印象です。マッチングの時点でチューターと学習者の双方のことを知っているのは私だけですから、この人とこの人ならきっとうまくいくのではないかと思ってマッチングします。しかし、マッチングがうまくいかないこともあります。これまでにも、「年齢差が大きく、話題が合わず話が弾まない」「初級の学習者との日本語によるコミュニケーションが難しい」「チューターが英語を多用して日本語をあまり使わない」等の相談を受けたことがあり、そのつど、おしゃべりの話題が多く書いてある本を紹介したり、翻訳アプリ等を紹介したり、わかりやすい日本語を使ってほしいとお願いしたりしていました。ただ、それでもやはり活動の継続が難しくなるペアもあったことから、チューターと学習者の年齢差が大きい場合や、日本語に不安のある初級の学習者の場合は1対1ではなく2対2、あるいはそれ以外の複数名による活動形態で、時間も少し短くするのがいいのではないかと思っています。現在、当校でも初級の学習者2名とチューター2名のグループがあり、オンラインですが、毎週30分の活動を楽しんでいるようです。

コロナ禍により、現在は対面でのチューター活動を実施するのは難しい状況です。しかし、そのような困難な状況だからこそ、外国人と日本人、いや、人と人が出会い、交流する場を作ることには社会的にも大きな意味があるのではないでしょうか。このコラムを読んでチューター活動をやってみようかなという人がひとりでも多く出てくれば、それに勝る喜びはありません。

 外国の人と話したことのなき人のなき社会を築かむと

執筆/惟任将彦(これとう・まさひこ)

名古屋YMCA日本語学院主任教員。兵庫県出身。高校までは体育会系だったが、大学から文化会系に転向、短歌を始める。大学卒業後に働きながら日本語教師養成講座に通い始め、1999年から2001年までネパールで日本語を教える。帰国後は主に大阪YMCA学院で教え、2017年10月より現職。日本語教育に関する主な著書に『ネパールで学ぶ日本語Vol.1~Vol.4』(共著、自費出版)、『テーマ別中級から学ぶ日本語三訂版ワークブック』『テーマ別上級で学ぶ日本語三訂版ワークブック』(いずれも共著、研究社)などが、歌集に『灰色の図書館』(書肆侃侃房)がある。

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