映像翻訳Web講座ベーシックコースを遂に完走した、アルクショップ担当Kです。
第4回では、ボイスオーバーで苦労した同じ映像を使って字幕翻訳にリトライし、なんとかコース最後の課題まで提出したところまでお伝えしました。今回はいよいよ最終回。最後の課題の添削結果と、全6課題を走り切って見えてきたことを、正直にまとめます。
【自己紹介】
名前:アルクショップ担当K
英語歴:(一応)英文科卒。英語力はほどほど。海外留学経験なし。映像翻訳経験なし。大学で英文翻訳ゼミの単位を落としそうになったのがトラウマ。
ついに届いた、最後の評価表

ステルス提出した最後の課題。ドキドキしながら評価表を開くと、結果は……安定の「C」。最初から最後まで、私の評価は一切ブレませんでした(笑)。総評には「全体的にしっかり原文解釈ができていました。一部ニュアンスがずれていたり読みづらい訳がありましたので、訳例などを参考に再考してみましょう」とのコメント。
そして最後に添えられた「ベーシックコース全6回、お疲れさまでした!」のシンプルながら正鵠を射た一言に、じんわりきてしまいました。
厳しいけど腑に落ちる、最後の添削

今回の添削で特に印象深かったのが、固有名詞の訳し方です。花の名前を学名のカタカナ表記(ビオラ・パルストリス)で訳したところ、「正式かどうか確信が持てない場合、学名ではなく英名をカタカナ表記にするほうが無難」との指摘が。第4回ブログの「invisible grouse」を誤訳したときと同じく、今回も「調べたつもり」が詰めが甘かったわけです。固有名詞との戦いは、最後まで私の鬼門でした(ナマケモノ族の特性でしょうか)。
もうひとつ印象に残ったのが、「服を十分に用意して」と訳した箇所への指摘です。「『十分に用意して』だと、上着を何枚も用意してほしいように読めます」と。私は「いろんな天候に合わせた服装が必要」というニュアンスのつもりで書いたのに、読み手にはまったく違う意味で届いてしまう可能性があるんですね。最終課題の指示書にあった「視聴者にどう伝わるかを考える」という意図と、言葉の定義の大切さをここで再度実感しました。
そして、「書式・提出のルール」の指摘も地味に効きました。毎回のように指摘されている「守れていない」判定です。1つの文章を3枚もの字幕に渡って続けてしまったこと、句読点の数え方のルールを見落としてしまったこと……字幕づくりは表現力だけでなく、細かい「型」を最後まで気を抜けないものなんだと痛感。ルールを守るのが苦手な私にとって、映像翻訳の学びを続けるなら本気で向き合わなければならない関門です。
こうして、ベーシックコース全6回の課題提出を、なんとか完走することができました。ナマケモノ族の私がここまでたどり着けたこと自体、正直ちょっとした事件です。たぶん一つの教材を最後までやりきったのは、生涯初では……
オールCから見えてきた、意外な成長
最終課題の評価表を受け取ったあと、6枚の評価表を並べて見返してみました。すると、ちょっと面白いことに気づきます。総合評価は、1回目から6回目課題まで見事に一貫して「C」。成績表だけを見れば、私はこの3ヶ月、まったく成長していないように見えます。でも、総評コメントの"言葉"を1回目から順に追っていくと、話はまったく違ってきます。
第1回・第2回の課題添削は「原文のニュアンスからずれた訳が多く見つかりました」「原文から意味が離れていたり、ニュアンスがずれていたりする字幕がいくつか見受けられました」と、原文解釈そのものへの指摘が中心でした。それが3回目の課題になると、総評の書き出しが初めて「全体的に流れのいい字幕が作れています」に変わります。
第3回ブログで紹介したボイスオーバーの課題では「しっかり原文解釈ができていました」と評価されつつ、今度は尺合わせという新しい壁にぶつかり、第4回ブログで紹介した字幕リトライの課題では「全体的にテンポの良い字幕が作れています」という言葉をもらえました。そして今回の最終課題は「全体的にしっかり原文解釈ができていました」。
つまり、指摘される内容が「誤訳・ニュアンスのずれ」から「流れ・テンポ」、そして「原文解釈の精度」へと、着実にレベルアップしていたことになります。評価のアルファベットは変わらなくても、直されるポイントの"質"は確実に変わっていく。これこそが、C評価を6回もらい続けた私が実感した、地味だけど確かな成長でした。
異なる映像翻訳体験で得られたこと
そしてもう一つ実感したのは、同じ映像を字幕とボイスオーバーの両方で訳したからこそ見えた、伝え方の違いです。
耳で聞く言葉と、目で読む言葉。同じ情報でも、最適な日本語がまったく違うということを、頭でなく手を動かして実感できたのは、この講座ならではの経験でした。固有名詞の扱い一つとっても、ボイスオーバーでは正式名称をフルで読み上げたほうが伝わりやすく、字幕では思い切って削るほうが読みやすい。「正解」が一つではない世界に、6回分の課題を通してじわじわ慣れていった感覚があります。
また、私が思い描いていた華やか(?)な映像翻訳のイメージと違っていたのが、「調べものの姿勢」です。専門用語や地名は、Webで検索して終わりにせず、信頼できる資料や辞書に当たり、映像の実際の景色と照らし合わせる。第4回ブログで紹介した、「高原」と「高地」の違いに悩んだように、日本語の語感と正面から向き合う時間を、講座の課題が何度も与えてくれました。
字幕翻訳は英語力だけでなく、母語である日本語の解像度を上げていく作業でもあるのだと、今なら実感として言えます。
映像翻訳は、英語ができてもなんとかならない
正直に言うと、受講前の私は「映像翻訳=英語ができればなんとかなる」くらいに思っていました。でも実際にやってみると、必要なのは英語力よりも、字数や尺という制約の中で言葉を練り直し続ける粘り強さと、映像から伝わってくる空気を掴もうとする観察力でした。
前述の通り評価こそ最後まで「C」でしたが、添削のたびに「なぜその訳ではダメなのか」を理由まで含めて示してもらえたので、点数以上に「考え方の型」が身についた実感があります。これは独学の動画視聴だけでは、なかなか得られなかったものだと思います。
AIとの付き合い方考察 どうなる?映像翻訳
ここで少しだけ、今の映像翻訳を取り巻く状況にも触れておきたいと思います。ここ数年でAIによる音声認識・自動翻訳の精度は驚くほど上がり、以前なら数日がかりだった字幕づくりが数十分で終わる、なんてことも珍しくなくなりました。AI吹き替えも、話者の声質をそのまま再現できるレベルまで進化しています。
正直、受講前の私なら「これ、AIに仕事を取られるのでは……」と身構えていたと思います。でも6回分の課題を通して痛感したのは、AIが今なお苦手とする部分こそ、私が最後の課題まで悪戦苦闘してきたポイントそのものだった、ということです。専門用語や固有名詞の誤認識、文化的なニュアンスの読み取り、感情の機微。「ビオラ・パルストリス」で足をすくわれたのも、「服を十分に用意して」で誤解を招いたのも、まさに「AIが苦手とする」領域でした。
だからこそ実感するのは、これからの映像翻訳者に求められるのは、AIが出してくる下訳をそのまま右から左に流すことではなく、映像の文脈や登場人物の表情・間合いから言葉を選び取り、機械的な訳文を「その人らしい台詞」に磨き上げる力なのだろう、ということです。
そしてもう一つ、これはAIには絶対に持ちえないものだと思うのですが、字幕を作る人自身の人生経験です。喜びや戸惑い、後悔や葛藤を自分の中に取り込んだ人にしか選べない言葉が、きっとあるのではないでしょうか。今回の課題でも、映像の中の人物の心情に寄り添おうとするたび、自分自身のこれまでの失敗や経験が、訳語選びのヒントになっていました。
AIが得意なスピードと、人間にしかできない解釈や言葉選び。これからはその両方をうまく役割分担していく時代になるはずです。そしてその「人間にしかできない部分」を鍛える最初の一歩として、この講座はとても良いスタート地点だったと感じています。
【受講前の私と同じ悩みを持つ方へ】
Q. 全部の課題を提出しきれるか不安です。
A. 私自身、毎回ぎりぎりの提出でした(反省)。それでも6回すべて出し切れたのは、「完璧に仕上げてから出す」のではなく「期限内にとにかく提出して、添削で学ぶ」と割り切ったからだと思います。提出してからのフィードバックのほうが、独学より何倍も学びが濃いです。
Q. 結局、字幕とボイスオーバーどちらが自分に向いているか分かりますか?
A. 分かります。私は字幕のほうが性に合っていましたが、これは実際に両方の課題をやってみて初めて分かったことです。頭で考えているだけでは絶対に分からなかったので、ベーシックコースで両方体験できたのは大きな収穫でした。
Q. 修了したら、その先はどうすればいいですか?
A. まずはこの3ヶ月で「映像翻訳という仕事の解像度」がぐっと上がったので、次にどんな課題に挑戦したいかが自分でも見えてきました。さらに深く学びたい方向けの上位コースも用意されているので、興味のある方はショップページをチェックしてみてください。
言葉の花束、その先へ
全6回を振り返って改めて思うのは、映像翻訳は「英語を日本語に置き換える作業」ではなく、「映像が伝えたい思いを、日本語という花瓶にどう生けるか」を考え続ける作業だった、ということです。締め切りに追われながらも、辞書を引き、映像を何度も見返し、たった一文のために頭を悩ませる時間は、想像以上に豊かなものでした。
この体験のブログを読んで「自分にもできるかも」と思ってくださった方に、一つだけお知らせです。今回ご紹介した映像翻訳Web講座ベーシックコースが、9月20日(日)までの期間限定で10%オフになっています。全6回の課題と丁寧な添削がついてこの価格は、正直、かなりお得だと思います(受講した身として断言します)。気になっている方はチェックしてみてください。
映像翻訳Web講座ベーシックコースを見る(9/20まで10%オフ)
この体験ブログに全5回、お付き合いいただき、ありがとうございました。次はぜひ、あなた自身の「言葉の花束」を作ってみてください。