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映像翻訳Web講座を受けてみた【第3回:ドキュメンタリーとボイスオーバーの洗礼】

映像翻訳Web講座ベーシックコース受講中、アルクショップ担当Kです。コース後半に突入し、映像素材はラブリーなショートムービーから、大自然を探求するドキュメンタリー番組に。ラブとは疎遠、アウトドア好きの私は「これは得意分野かも!」と内心ほくそ笑んだ、のも束の間、そんな余裕は「ボイスオーバー」という、かつてない翻訳体験の前に吹き飛んだのでした。

性懲りもなく締め切り間際にあわあわしながらも、映像翻訳の幅広さを改めて思い知った第3回をレポートします。

【自己紹介】
名前:アルクショップ担当K
英語歴:(一応)英文科卒。英語力はほどほど。海外留学経験なし。
映像翻訳経験なし。大学で英文翻訳ゼミの単位を落としたのがトラウマ。

ドキュメンタリー番組なら得意……のはずだった

さっそく新しい課題の映像を視聴。コース後半の映像素材は、カナダの大自然をベテラン探検家のマイケルさんが美しい映像とともに紹介するドキュメンタリーです。アウトドアが好きで、海外の自然や野生動物の番組はよく観るので、「これはしめた!」と思いました。内容が身近なぶん、映像翻訳もしやすいはず——そう思っていたのです。

映像翻訳Web講座 第3回 ドキュメンタリー素材

しかし現実は甘くありませんでした。これまでは視聴者として吹き替えや字幕で番組を楽しんでいたけれど、いざ制作する側に立って今回のスクリプトを読むと、そこには未知の地名や動植物の固有名詞がいっぱい…… しかも今回は字幕制作じゃないの???

「ボイスオーバー(VO)」って何?字幕とどう違うの?

さて、「ボイスオーバー」とは何者か。「吹き替え」とは別物なのか?

「吹き替え台本を作るのかな」くらいの知識しかなかった私は、PDFで配布された付属教材「映像翻訳ハンドブック」の吹き替え翻訳に関する章を読んでみることにしました。

吹き替え翻訳には、ドキュメンタリーや報道番組などで使われる「ボイスオーバー」と、映画・ドラマなどで使われる「リップシンク」の2つの手法があります。
ボイスオーバー(VO)には、ナレーションなどの原音を消し、日本語の音声を流す場合と、インタビューや司会者のセリフなど話者が画面上に顔を出している部分では、オリジナルの英語の音声を小さく残したまま、それにかぶせるようにして日本語の音声を重ねる場合があります。

出典:「映像翻訳ハンドブック」

そーかー、「吹き替え翻訳」にはボイスオーバーとリップシンクがあるんだ……どうやら映像翻訳の森で迷走しかけていた私は、道を見だしたような気がしてほっとしました。

続いて毎回頼りにしている解説動画を見ます。

映像翻訳Web講座 第3回 ボイスオーバーのポイント動画

動画解説によるとボイスオーバーが字幕と大きく違うポイントは以下の2つ。

・情報が目からではなく耳から入ってくる。耳で聞いたときに分かりやすい表現を心がける
・訳文の尺(時間)を合わせるときには大きな声ではっきりと読む

字幕は視聴者が目で「読む」もの。ボイスオーバーは視聴者が耳で「聞く」もの。同じ映像、同じスクリプトであっても、最適な日本語表現が変わるんだ!少し考えれば分かることかもしれませんが、字幕がそのまま吹き替え台本になっていると思い込んでいた私にとっては、結構な驚きでした。

「尺合わせ」をやってみる

四苦八苦しながら地名や動物の名前などの専門用語を調べて、締め切り前日にようやく課題の訳を完成しました。これまでの字幕翻訳の課題なら見直してめでたく提出となるのですが、「ボイスオーバー」には字数制限がない分、映像に合わせて台本を読み上げて、「もとの英語の音声と日本語訳の長さを合わせる」という大仕事があります。

家族には「今日のごはんもセルフで」と宣言し、人払いした自室に籠ります。PCに課題映像と自分が作った台本を表示して、声優さんになったつもりで、アテレコスタート!「すごい眺めだ! グロス・モーン国立公園のロングレンジ山脈の頂上に着きました…(ムニャムニャ)」。ああ、ダメだ間に合わない、待ってマイケルさん~~。私の必死の願いも空しく、場面は冷酷に切り替わっていきます。人生初めてのボイスオーバーへの挑戦は、尺合わせが全然できなくて完敗しました。

4回目は映像に合わせてなんとか最後まで読み上げたものの、超早口の弾丸トークになってしまいました。こんなナレーションでは大自然を悠々と探索するマイケルさんのキャラクターに合わないし、視聴者もきっと何を言ってるか聞き取れない——そうか、とにかく情報を削ればいいんだ——焦った私は苦労して調べた地名や植物の名称を全部削り、無理やり尺に合わせて課題提出したのでした。結果は…… 推して知るべしです。

後半戦の初回評価

2週間後、後半戦初回の総合評価と添削が戻ってきました。総合評価には「もう少し時間をかけて、改善できる表現はないか、表記ミスはないか、などを繰り返し丁寧に見直して、訳をブラッシュアップさせましょう。」とありました。添削を見ると、尺合わせのために木の名称を削ってしまった箇所について丁寧にコメントされていました(画像)。映像翻訳では視聴者の特性まで考えて台本を作るんですね。ううむ、やっぱり削らなければよかった。

映像翻訳Web講座 第3回 スタッフK添削結果

ボイスオーバーも意外に楽しい

字幕翻訳のときは文字数制限が重荷でしたが、字数制限のないボイスオーバーをやってみると、なぜか文字数を指定された字幕課題の方が取り組みやすかった気がしてきました。うーん、なぜだろう。

実際にはボイスオーバーも字幕も、映像の「尺(場面の時間の長さ)」に合わせて作られます。字幕翻訳ではこの尺が文字数で指定されていました。ボイスオーバーでは時間だけでなく聞きやすさも考慮して自分で設定しないといけません。「時間制限の中で情報を伝える」という共通点があっても、字幕は視覚情報、ボイスオーバーは聴覚情報なので、最終的にアウトプットする表現が異なってくるんですね。

苦労して生み出した字幕やボイスオーバー、どちらも映像と一緒に一瞬で消えてしまいます。なんだかもったいないような贅沢なような気がしますが、観る人の心に刻まれた表現はずーっと残るんだよなと、昔観た映画の大好きなセリフを思い出しながら、一人悦に入るのでした。

【よくある質問】

Q. ボイスオーバーと字幕、どちらが難しいですか?
A. 一概には言えませんが、慣れない方には「ボイスオーバーのほうが難しい」と感じる方が多いようです。字幕は文字数と読みやすさが主な制約ですが、ボイスオーバーは「耳で聞いてわかる表現」+「尺合わせ」という二重の制約があります。声に出して読む練習が効果的です。

Q. 課題の評価が低くても続けられますか?
A. 添削コメントは「どこが違うのか」「どうすればもっとよくなるのか」が赤字で丁寧に書かれているので、この赤ペンこそが私にとって一番の教材だと思っています。評価より、コメントを読み込むことに集中するのがおすすめです。

Q. 後半から素材が変わると聞きましたが、ついていけますか?
A. ベーシックコースは前半と後半で映像素材の種類や課題形式が変わります。最初は戸惑うかもしれませんが、それも含めてカリキュラムの設計です。「勝手が違う!」と感じたら、それは新しいスキルを学んでいるサインです。いろいろな角度から映像翻訳に挑戦するのは楽しいですよ。

映像翻訳Web講座ベーシックコースの詳細はこちら

▶ 次回予告:第4回は、同じドキュメンタリー映像を使って、今度は字幕翻訳に挑戦!ボイスオーバーとの違いを身をもって体験した結果は……?

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