映像翻訳Web講座ベーシックコース受講中の、アルクショップ担当Kです。第3回では、ドキュメンタリー映像のボイスオーバー翻訳に挑戦して、尺合わせの洗礼を受けたお話をしました。ボイスオーバーと同じドキュメンタリー番組の映像を使って字幕翻訳にリトライ!そして、ついにベーシックコース最後の課題を提出…… 正直な総まとめをお届けします。
名前:アルクショップ担当K
英語歴:(一応)英文科卒。英語力はほどほど。海外留学経験なし。映像翻訳経験なし。大学で英文翻訳ゼミの単位を落としそうになったのがトラウマ。
同じ映像、今度は字幕翻訳で

こうしてボイスオーバーの山を乗り越えて、いよいよ講座の後半戦である5回目の課題に挑戦します。講座の課題は全部で6つ、なんとラスト2回の課題では、ボイスオーバーと同じドキュメンタリー映像を使って、字幕翻訳をするのです。「同じ映像だし、5回目と6回目は楽勝!」とショップ担当という立場を忘れ喜びを抑えきれない私。今度こそ早めに提出しようと思っていたのに、気づけばやはり締め切り当日を迎えていました。「出前頼んだから~」という息子の声を背に自室に籠ります。ああ、ナマケモノの辞書に学習の文字はない。
とはいえ、今回はいつもの「締め切り当日」とは違います。ボイスオーバーの課題で散々苦労して何度も見直した映像なので、内容はばっちり頭に入ってる。地名や動植物の固有名詞も調べてあるし、これまでの課題の解説や添削だって目を通したし。ボイスオーバーで一度言葉にしているわけだから、それを字数調整すればいいのではないか。私が「これは楽勝だ!」と油断したのも(たぶん)ご理解いただけると思います。
しかし当然のことながら、講座の総まとめとなる課題がそんなにハードルが低いわけはありません。出前をかきこみながら5回目の課題をなんとか提出した私は、この「最後の課題」、ラスボスを相手に思わぬ苦戦を強いられることになるとは思ってもいませんでした。
字幕翻訳の添削が返ってきた
ドキドキしながら5回目課題の評価表を開いてみると……結果は常連の「C」。楽勝、ではなかったです。
課題の総評はこちら。

「全体的にテンポの良い字幕が作れています。」……(!ほめられた!)はよいのですが、誤訳はいけません。一体どこを間違えたんだろう?と添削を確認します。

「invisible grouseはライチョウの羽の色が保護色になるので、ライチョウが周囲に溶け込んで区別しづらくなることを指しているため、「希少動物」だと誤訳になってしまいます。」
……11番の「希少動物」。やってしまいました。制限文字数が8文字と少ないので、「invisible(見えない)」という単語から「見つけにくい=希少」とメガ訳をしてしまいました。ちなみにこのセリフのサンプル訳(解答例)は「かくれんぼの達人」。ぴったり8文字、さすがだわ~。添削の返却と同時にサンプル訳が入った動画も見られるようになりますよ。見つけやすいように invisible grouse(ライチョウ)を赤丸で囲んでみました~。

14番にはこんなコメントも。
「映像から見る限りだと、「高原」というよりは「高地」でしょうか。」
解説動画で「ドキュメンタリー映像の専門用語は、信頼できる資料を確認し、映像の実際の景色と照らし合わせて厳密に言葉を選ぶべし」——と説明があったのでした。そうであった、と反省し、手元の『日本語 語感の辞典』(中村明 著、岩波書店 刊)で「高原」と「高地」を調べてみます。
こうげん【高原】高地にある平原
こうち【高地】標高の高い土地(中略)平坦な土地でなくても言う。
この視点で改めて映像を見ると、起伏のある山脈地帯の大自然をベテランガイドのマイケルさんと探索するドキュメンタリーです。なのでこの字幕では、「高地」が適切なのですね。字数制限がある字幕翻訳では言葉を極限まで突き詰めていく作業が必須ですが、だからこそ、こうして日本語にもじっくり向き合う瞬間を与えてくれるんだなあ。今回も貴重な体験をしてしまいました。
ついに……最後の課題を提出
いよいよコース最後となる6回目の課題。前回の映像から少し先のシーンを字幕翻訳します。まず今回の課題指示書の注意点を確認します。
「そのまま訳すのではなく、ニュアンスをつかんで視聴者にどう伝わるかを考えながら日本語に表現します。会話は固くならないように、リアルなセリフづくりを目指します。」
ふむふむ。字幕を作ることに集中するあまり視聴者の視点を忘れがちですが、自分が納得しても、観る人に届かなければ字幕だけが独り歩きしてしまうんですね。気を引き締めて、今回のポイント解説動画を見ます。

難しい調べものはつい手軽なWebで済ませてしまいたくなりますが、手順としてはまず「図書館(書籍)」なんですね。字幕って結構自分の手足を使って書くんだなーと意外に思いました。足を鍛えてフットワークを軽くしないと。
そして今度こそ丁寧に時間をかけようと決意していたのに、最後の課題もステルス提出となりました。添削結果はまだ返ってきておりませんが、どうなることやら。
これでベーシックコースすべての課題提出を完了しました!とりあえずよくやった、私。ナマケモノ族がここまでたどり着けるとは、私にとって人生初の教材完走かもしれません… あとは課題の結果を待つのみとなりました(安堵)。
ボイスオーバー vs 字幕、両方やってわかったこと
ボイスオーバーは「耳で聞いてわかる表現」と「尺合わせ」がポイントでした。字幕は「文字数制限」と「読みやすさ」が課題です。同じ映像、同じスクリプトなのに、いざ取り組んでみると最適な日本語がまったく違う。
たとえば、ボイスオーバーでは「グロス・モーン国立公園のロングレンジ山脈」と固有名詞をフルで入れたほうが耳で聞いたときに伝わりやすい。でも字幕では文字数が限られているので「ロングレンジ山脈」と省略するほうが読みやすい。同じ情報でも、目で読むか耳で聞くかで、最適解が変わるんですね。
「字幕のほうが取り組みやすかった」という感想は、ボイスオーバーの苦労があったからこそ。どちらが難しいかは一概には言えないけれど、両方やってみて初めて映像翻訳の奥深さがちょっぴりわかった気がしました。
言葉の花束をつくる
ボイスオーバーや字幕制作という新しい体験を通して感じたのは、「やっぱり自分は言葉が好きなんだなあ」ということでした。映像とスクリプトから伝わってくる思いや情景を、パーッと空にばらまいて、降ってきた言葉を字幕という花瓶にそっと生ける、そんな素敵な体験ができました。
Q. 英語力に自信がなくても大丈夫?
A. 私はTOEIC700点程度ですが、それより大事なのは「続ける意志と好奇心」だと思います。添削が丁寧なので、英語力より何度も言葉を練り直す粘り強さのほうが武器になります。
Q. 仕事しながら3ヶ月続けられる?
A. 続けられます。ただし「まだ時間がある」と思わないこと(私への戒め)。約2週間に1回の提出ペースなので、例えば1週目にざっと解答の下書きを作っておいて、締め切りが近くなったら仕上げる、という方法なら、まとまった時間がなくてもできそうですよね。
Q. 字幕とボイスオーバー、両方やるの?
A. ベーシックコースでは前半が字幕翻訳、後半がボイスオーバーと字幕翻訳の両方を体験できます。1コースで何度もおいしい、入門レベルながらフルコースを体験できる、それがこのコースのオススメポイントです。
▶ 次回予告:第5回(最終回)では、コース修了後のリアルな変化と「これからどうするか」をお伝えします。お楽しみに!