人気WEBサイト「シゴタノ!」で、仕事を楽しくするためのコツやツールを紹介し、多くのビジネスパーソンを中心に熱烈なファンを増やし続けている大橋悦夫さん。 最近は、朝のジョギングが新しい習慣になっているそうです。 ほかの用事が入ってくることがほとんどない朝の時間。 この実りの多い時間に新しい習慣を根付かせるためのコツについて、ご自身の体験も踏まえてアドバイスしていただきました。
ブロガー、セミナー講師、ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。
上智大学外国語学部英語学科を卒業後、ソフトウェア技術者、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、有限会社サイバーローグ研究所を設立。
現在はブログ記事の執筆を中心に、仕事のスピードアップ・効率アップ・やる気アップをテーマとしたセミナーや研修を手がけ、
20〜30代のビジネスパーソンに人気を博している。
文:石渡淳元 撮影:橋本和典
─── 『「手帳ブログ」のススメ』の中で、習慣を根付かせるためのポイントを2つ挙げていらっしゃいますね。 1つめのポイント、「習慣化するための目的を明確化する」について何かよい方法があれば教えてください。
「ソレデ?」と「ドシテ?」の2つの問いを、投げ掛け続けるのが効果的です。これは「起-動線」を主催する堀内浩二氏が提唱している方法です。
たとえば、こんなふうに行います。「英語の勉強することにした」「ソレデ?」「英語で会話ができるようになれば、日本人以外からもいろいろな情報が入ってくるでしょ」「ソレデ?」「それによって話題の引き出しが増えるから、魅力的に見えるし、それってビジネス上のメリットもあるんじゃないの」「ソレデ?」「そうすると、年収も上がるでしょ」「ソレデ?」「だって、年収上がったらいいじゃない」「ソレデ?」「う〜ん」
こうやって答えに詰まるまで「ソレデ?」に答えて行くと、「自分は何を求めて英語を勉強するのか」ということが見えてきます。
「ドシテ?」も使い方は同じです。「これから英語の勉強するんだ」「ドシテ?」「この間のTOIECのスコアが悪かったから」「ドシテ?」「勉強しなかったから」「ドシテ?」「英語の勉強、苦手だから」「ドシテ?」「う〜ん」
この場合は、英語の苦手意識を変えることが先決なのではないか、ということがわかってきます。
「ソレデ?」に答えていくことで自分は未来に何を求めているのか、「ドシテ?」に答えて行くことでその目的の根っこにあるものが何であるのかが、見えてくるはずです。
─── 目的が明確になったとして、いざ実際に始めてみると、いろいろな「事情」で挫折してしまうということが起こりがちです。 2つめのポイント、「無理なく続けられるように工夫する」ということについて、具体的に教えてください。
実行するときに想定される障害を、あらかじめ、できるだけ少なくしておくことをお勧めしたいですね。私は毎晩ジョギングの服装で寝ています。ですので、起きたらすぐ靴を履いて走り出すことができます。服を着替えるというのは、一見、小さな手間ですが、立派な障害になり得ます。服を着替える間、ちょっとだけPCを見てみよう、といった誘惑が入り込みやすくなるからです。朝の勉強であれば、朝起きて、そのまますぐに勉強を開始できるよう準備をしておくことが大切ではないでしょうか。
─── 今夜から実行できそうなアドバイスを、ありがとうございます。ところで、さきほどお伝えした「事情」の中には、「今日を例外にして、やらない言い訳にする」ということもありそうです。例えば、ジョギングでしたら、「雨が降っているから」「寝坊したから」今日は止めておこう、といったパターンです。大橋さんは、こういった「例外的な事情」に対して、どう対処されていますか。
私は「プランB(代替案)」を用意しています。『チャーリーズ・エンジェル』というドラマをご存知ですか。敵が予想外の動きをして、当初の計画が実行できなくなったとき、彼女たちは「じゃあ、プランBで行くわよ」と言って、即座に代替プランを実行します。私の場合、雨の日は、「いつも走っている公園内にあるジムに行き、ランニングマシンで走る」というのがプランBです。英語の勉強でも、どうしても気が乗らないときなどのために、別メニューのプランBをあらかじめ作っておくとよいでしょう。
また、朝の出発の時間が遅れたときは、ショートバージョンを実行しています。私は毎朝家から公園まで徒歩で10分、往復20分かけて行き、公園内を25分走っていますので、朝のジョギングタイムは45分と決めています。出る時間が10分遅くなったときは、家から公園までを走ることで、25分の走る時間を確保するようにします。英語の勉強でもこのように時間のゆとりを設定しておくのは、有効です。あるいは、あらかじめショートバージョンのメニューを作っておく、といった工夫もできると思います。
─── お話を伺っていると、1日に使える時間を分単位で大切にされていると感じました。 朝の貴重な時間を使って、毎日何かに継続的に取り組むためには、時間に対する意識を高めておくことも大切ですね。
そうですね。時間がまだたくさんあると思っているときって、じつはそれほど多いわけではないんですよね。時間がポテトチップスだとすると、袋から直接食べると、あっという間になくなってしまいます。でも、小皿に小分けして食べていくと、1皿毎に「これだけ食べた」と実感できるので、大事に食べるようになります。「あと3カ月ある」と大きくとらえずに、「今日1日でこれだけやれる」「午前中にここまでできる」のように小さくとらえて時間を使うことで、時間をより大切にするようになると思います。
─── いま振り返ってみて、朝のジョギングを習慣にした、最も大きな要因をひとつ挙げるとしたら、それは何になりますか。
仲間の存在が大きいですね。たまたまあるとき、家が近所の友人3人で飲んだのですが、「ジョギングってなかなか続かないよね」という話から、「じゃあ、今度3人で一緒に走りましょう」ということになりました。1年で最も寒い時期に始めれば、そこから先は暖かくなるだけだから、続けやすいだろう。そんな理由で、2月の月曜日、朝6時45分に最寄りの公園に集合して一緒に走りました。最初は走るのが苦痛でしたね。でも、公園に行きさえすれば走ることになりますし、仲間と約束をしたのだから毎週行かざるを得ません。ところが続けていくうちに、走るのが楽しくなってくるんです。週1回が2回、3回と増えていき、最後は毎朝になっていきました。
開始直後の最も抵抗の大きい時期に、大気圏脱出のための補助ロケットのような役割を、仲間が果たしてくれたのだと思います。
子どもが頑張れるのは親が認めてくれるからですが、大人も同じです。仲間と走ることで、お互いに認め合っているのだと思います。ですので、朝の英語の勉強も、一緒に学ぶ仲間を作ることを、ぜひお勧めしたいですね。
─── ご著書やブログでは、記録して振り返ることの効用をいろいろと説かれていますね。 継続すること、習慣化することに関して、記録の効用にはどんなものがあるのでしょうか。
さきほどジョギングが続いている大きな理由として「仲間」を挙げましたが、じつは「記録」も同じくらい大きな理由になっています。
私は走るときには、iPhoneのRunkeeperというアプリケーションを利用しています。iPhoneにはGPSが内蔵されているので、走った経路の地図、距離、時間毎のスピードの変化、消費カロリーなどが毎回記録されます。1キロ何分で走ったかも毎回出るので、例えば「6分以内で走る」と目標を決めて頑張っています。もうひとつ、走行距離を毎日100メートルずつ長くする、ということにも今、挑戦中です。
「今日はがんばった」といった「気分」ではなく、「数字」で記録していくことがポイントです。この記録がたまっていくのは純粋に楽しいですし、数字が向上していくのはゲームをやっているようで張り合いがあります。
─── 最後に応援メッセージをお願いします。
習慣化するということは、ペンキ塗りだと思うとよいでしょう。1回塗っただけでは、かならずムラが出ます。2回目、3回目と何度も重ねて塗っていくうちに、きれいにムラのない仕上がりになっていくのです。そのためには、「やらなければいけない」という義務感ではなく、「やりたいからやる」という楽しい気持ちを忘れずに、頑張ってください。




